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競争法編
企業結合の検討のための社内資料の作成に注意が必要! ―当局から提出を求められる可能性
企業にとって、企業結合(M&A)は、自社の成長や競争力を高めるための重要な戦略ですが、独占禁止法(独禁法)は、競争制限的な企業結合を禁止し、一定規模を超える企業結合について事前の届出を義務付けられています。
近時の公正取引委員会(公取委)の企業結合審査の動向を見ると、企業結合審査を行うに当たり、当事会社が作成した社内資料(内部文書)の提出を求められるケースが増えています。
社内資料であっても、公取委から提出を求められることがあることを意識して作成することが求められます。取締役会等で使用する社内資料の中で、勢いよく、M&Aの目的が「業界を独占すること」、「ライバル会社が取引できないようにすること」といった誤解を招くような競争制限的な文言を使うことがないように気を付けましょう。
公取委は、令和元年に「企業結合審査の手続きに関する対応方針」を改正し、当事会社の認識を確認するために、当事会社の内部文書の提出を求めることがあることを明らかにしました。続いて、令和4年には、「企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務」というガイダンスを公表して、「当事会社グループがどのような意図・目的をもって企業結合を計画しているのか」、「企業結合の結果、第3者にどのような影響が生じると予測しているのか」、「市場の将来をどのように予測しているのか」を把握するために、「取締役会等の各種会議で使用された資料や議事録」、「企業結合の目的・効果等について検討・分析した資料」、「企業結合の検討に関与した当事会社グループの役員・従業員の電子メール」等の提出を求める場合があるとしています。
実際に公取委が企業結合審査に当たって内部文書を活用した事例も出てきており、令和5年度は10件、令和6年度は6件、令和7年度は6件の事例で活用されたことが公表されています。また、従来、公取委は、個別事例の紹介において、内部資料の提出を求め、提出された内部資料を精査したことだけを公表していましたが、令和7年3月に公表された事例の公表文では、当事会社が主張した企業結合がもたらす効率性の向上に関する検討において、「当事会社の内部文書では、・・・ことが確認された」等、内部文書の内容も紹介されています。
なお、企業結合審査に当たって内部文書を活用することは、国際的にも競争当局の標準的な審査手法となっており、例えば、英国では、競争当局のCMAが「Guidance onrequests for internal documents in merger investigations」というガイダンスを公表しています。また、欧州委員会は、2018年の案件ですが、バイエルとモンサントの農業分野の企業結合案件の審査結果の公表において、当事会社から提出された270万もの内部文書を精査した旨を明らかにしています。
企業結合の検討のための社内資料は、公取委から提出を求められる可能性があります。社内資料だからと言って、企業結合によって自社が市場を独占することができる、ライバルを排除することができるといった、安易な言葉を使わないように気を付けることが重要です。特に、役員・従業員間のメールまで提出を求められることがあり得ることを認識して、日頃の社内連絡を心がける必要があります。