2026.08.21

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競争法編

震災等の緊急時における会社の対応と独占禁止法

はじめに


近年、全国各地で規模の大きな地震が相次いでいます。被災地域の復旧・復興に向けて、必要な資材の供給を確保し、また、生産活動や物流を維持するために、会社同士が話し合って、連携・協力して取り組むことが求められますが、競争関係にある会社との共同の取組は、カルテルや談合といった独占禁止法(独禁法)の違反リスクがあるので、留意が必要です。

今回の勘所


会社間の取組が、被災地に優先的に物資が供給されるようにする、顧客に物資が広く行き渡るようにするといった社会公共的な目的のために行われるものであって、物資の不足が深刻な期間・地域において行われるものであれば、独禁法上問題となるものではありません。ただし、物資の供給に支障が生じている事態に便乗して価格カルテルを行ったり、物資の不足が解消された後になっても続けたりする場合には問題が生じます。

近時の実務動向


公正取引委員会(公取委)は、被災地域における事業活動の継続を支援する観点から、「震災に関連するQ&A」(震災に関連するQ&A | 公正取引委員会)(注)を公表して、以下のような復旧に向けた会社間の取組について独禁法上の考え方を明らかにしています。

①震災による物資の不足を受けて、事業者が共同して又は事業者団体が、「顧客1人当たりの販売個数を調整したり決定したりすること」について、「被災地に優先的に物資が供給されるようにする、顧客に物資が広く行き渡るようにするといった緊急の対応として専ら行われるものであって、物資の不足が深刻な期間及び地域において実施されるものであれば、独占禁止法上問題となるものではありません。一方、そのような調整を、著しい物資の不足が解消された後になっても続ける場合には、独占禁止法上の問題が生じますので、御注意ください。」としています。

②自社の工場が被災し、操業開始のめどが立っていない。また、製品の在庫も尽きつつあるという状況において、「顧客への供給を確保するため、当該製品を生産している競争事業者に自社に代わって顧客に供給してもらったり、生産を委託したりすること」について、「被災によって自社の供給能力が喪失又は減少した場合に、自社の供給能力が復旧するまでの間、顧客への供給を確保するために必要な範囲で、競争事業者に代替供給を行ってもらうことや生産委託を行うことは、独占禁止法上問題となるものではありません。ただし、代替供給等を契機に、複数の事業者間で相互に価格や供給量等について制限することは問題となりますので、御注意ください。」としています。

なお、震災による被害からの復興のためには会社間の協力が必要となること、適切な範囲での期間限定の会社間の取組が独禁法上の懸念を生じさせるものではないことについては、国際的にも競争当局の理解が得られており、例えば米国では、司法省が独禁法のガイダンスを公表し、公取委と同様の考え方を明らかにしています(Antitrust Division | Antitrust Guidance - Hurricanes Katrina And Rita)。

まとめ


震災等の緊急時に、被災地に優先的に物資が供給されるようにする、顧客に物資が広く行き渡るようにするために必要な会社間の取組は、適切な期間・地域で行われるものであれば、独禁法上問題となるものではありません。他方で、物資の不足に便乗して価格カルテルを行う場合には問題が生じるので、震災等に際して他社と共同して取組を行う場合には、必ず法務部門に相談するよう社内で呼びかけるとともに、記録を作成しておくことが必要です。

(注)公取委のQ&Aでは、今回紹介した会社間の共同の取組の事例のほか、委託事業者が被災し、工場が減失するなどして委託事業者に受領能力がないことを理由に受領拒否することなど、独禁法の優越的地位の濫用や取適法の観点からの事例も紹介されています。