2026.05.29

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知的財産編

安易な模倣・流用に注意! ~フリーライドに対する制裁~

はじめに


IT 技術の発展により、他社が作成・蓄積した情報やデータを複製・移転することは容易になっています。そのため、他社の顧客情報、取引情報、商品情報等を自社事業に取り込んだり、退職者が前職で得た情報を新たな勤務先で活用したりする場面も少なくありません。
こうした場合、利用する側は、著作物や営業秘密にも当たらないものについては、安易に利用できると考えがちですし、利用された側も、著作物や営業秘密に当たらない情報の場合は、利用者への賠償請求等を断念することが多かったと思います。

しかし、著作権法や不正競争防止法の保護対象に当たらない情報であっても、取得方法や利用態様によっては、不法行為として差止めや損害賠償の対象となる可能性があります。
実務上は、「著作物か」「営業秘密か」だけで判断を終えるのは危険です。

今回の勘所


問題となるのは、相手方が時間・労力・費用をかけて築いた情報や事業上の価値に、自社が便乗する形になっていないか、また、その利用が相手方の事業を実質的に阻害していないかという点です。

そのため、第三者情報の利用を検討する際には、①その情報が相手方にとって重要な価値を持つか、②自社の利用が相手方の成果への「ただ乗り」と評価されないか、 ③相手方の収益機会や事業運営を害しないか、④取得経緯に契約違反や背信性がないか、といった点を確認することが重要です。

裁判例から見える実務運用


近時の裁判例では、著作物や営業秘密に当たらない情報であっても、相手方の成果に依拠して自らは負担なく利益を得る場合や、相手方の事業モデルを害するような場合には、不法行為の成立を認める傾向がみられます。

例えば、バンドスコア事件¹ では、採譜に要する時間・労力・費用へのフリーライド性や 、原告事業への妨害的側面が重視されました。また、囲碁将棋チャンネル事件² でも、有料で提供される情報を無断で再現・配信し、広告収入につなげた点が問題とされています。さらに、退職者による顧客情報等の持ち出しについても、営業秘密に当たらなくても、不法行為責任が認められる例があります。

まとめ


このように、第三者情報の利用に当たっては、「著作物ではない」「営業秘密でもない」というだけで安心することはできません。取得経緯、利用態様、相手方事業への影響を含め、全体として公正な利用といえるかを検討することが重要です。

反対に、自社の情報が模倣・流用されている場合も、著作権や営業秘密の要件を満たさないからといって、直ちに対応手段がないとは限りません。相手方の行為が成果への便乗や事業妨害と評価できるのであれば、不法行為に基づく対応を検討する余地があります。


※1 バンドスコア事件(東京高判令和 6 年 6 月 19 日)
被告側が、原告側が制作・販売するバンドスコア(採譜した楽譜)を無断で模倣して無料公開し、広告収入を得ていた事案において、 ①採譜やその技能修得に係る時間・労力・費用へのフリーライド性、 ②不公正な手段・態様による害意での営業妨害等を理由に、不法行為の成立を認めました。

※2 囲碁将棋チャンネル事件(大阪高判令和 7 年 1 月 30 日)
プロ棋戦の主催者側によるライブ有料配信につき、その視聴者が棋譜情報をリアルタイムで将棋盤上に再現して無料配信し、広告収入を得た行為につき、 ①リアルタイム情報の重要性、 ②これを有料配信して運営するモデルの阻害、 ③これらの認識・害意等を理由に、不法行為の成立を認めました。